日本人は「日本と米国は違う」ということは分かっていても、「同じではない」とは認識していないのではないかと思う。つまり、何かを見たり聞いたり感じたりする場合、日本人は物事を日本人全体としての常識で判断するから、米国での出来事もそれに当てはめてしまいがちである。
しかし、往々にして思い過ごしや勘違いをしている場合もあるはずだ。(それを私はパーセプション・ギャップと呼んでいる)
米国人にとってのcommonsense(常識)は、「ひとり一人が違うもの」という認識があるから、米国人全体の常識、まして暗黙の了解などというものは無いに等しい。だから『ジョーシキで考えれば分かるだろう』などと米国人に言っても通用しない。それは、日本人の常識でものを言っているに過ぎないからだ。「日本の常識は世界の非常識」というのは、こういう意味なのだと私は解釈している。
ひとつの例として交通ルールがある。マンハッタンを走るイエローキャブの機転の利くドライバーは、右折する際には一番左車線から、左折するなら一番右車線から大回りする。(私もそうする)
ルール違反ではあるが、マンハッタンで急ぐときにはこの方法に限る。交通ルールという「常識」を律儀に守っていてはいつまで経っても割り込まれてばかりで、客からたちまちブーイングが起こってしまう。
混沌としたマンハッタンの街を運転してみれば分かるが、滅茶苦茶なようでいて統制が取れており、大きな事故も起こらない。必要最低限のルールさえ守っていれば、あとは臨機応変に対応してこそ車もスムースに流れるというもの。違反チケットは容赦なく切られるが、それは自己責任ということ。
さて、HSBC銀行のブランド・キャンペーン
ユア・ポイント・オブ・ビューはとても興味深い。ふたつの写真を交互に並べて、視点を変えれば反対の意味にも捉えることができるというもの。「人はそれぞれに異なる見方を持つ」との考えにもとづき、多くの人々の意見を歓迎する企業であることをアピールしているのだ。
物の見方や価値観の相違をつねに考えるということは、スティーブ・ジョブズの遺言「think different」にも通じるものだと思う。