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#16:GAPを利用した人

ダイエー創始者の中内氏は、晩年「消費者が見えなくなった」と呟いたという。しかし、それは流通のカリスマだけに限ったことではないし、じつは昔から消費者は見えていなかったのではないだろうか? つまり、企業からの視点だけで考えられていたマーケティングが終わりを告げた象徴的な言葉に聞こえる。
 
消費市場を見回しても、例えば音楽をジャンルで区分けすることなどできなくなったし、自動車のカテゴリーは細分化され、小売店の形態もハイブリッド化が進んでいる。こんな時代の消費者行動を既存のカテゴリーで分析しても通用する時代ではないだろう。

これからは、企業側の一方的な思い込みではなく、商品やサービスを通して消費者とインタラクティンブな関係を持つことでようやく見えてくるはずだ。その重要性に気がついている企業が、CRMに積極的に取り組んでいると思われる。

消費者を囲い込むなどとうてい無理だと分かっている米国の企業は、消費者とフェアな関係を結ぶためのアプローチには積極的だ。フェアといっても、日本から見るとそうは見えないかも知れない。しかし、「フェアを重んじるシステム」が整っていることで、国民は社会に、消費者は市場に希望を見出すことができる。これが何よりも重要なことではないだろうか。

このことはライブドア事件にも関連している。

日本政府が、景気回復のために米国並みの自由化を推進し規制を緩和したのは理解できる。原則自由な市場制度を導入したまでは良かった。

しかし、同時に導入すべき米国並の厳しい市場監視システムの整備を怠った。フェアなルールの徹底を図らなかったため、その隙を巧みに利用したライブドアによって今回のような事件に発展したのだ。そういった意味では一企業の問題ではなく、むしろ政治の責任はとても大きいと思う。ある人は比喩で、「渋滞している高速道路の路肩を、後ろにタケベを乗せてスイスイと走ったホリエモン」と言っていた。

もはや、グローバリズムの波に乗らざるをえない立場の日本。米国とは違う文化の国に、米国型の市場システムを導入するのであれば、表層的なオイシイ部分だけを真似るのではなく、フェアプレーのルールや厳重な罰則も徹底させるべきだったのだ。

極端な話、性善説に基づいている日本に、性悪説の米国のビジネス・スタイルを根付かせるということなのだから。

企業が消費者をコントロールできた(と思われていた)時代は終わっている。国が富んで企業が富めば、結果的に消費者も豊かになるという従来型の日本経済は、消費者のためではなく企業のため、ひいては国のためであったが、行政府も消費者保護から消費者自立の方向にシフトし始めている。

そのことにより、企業にとって『お客様は神様』、消費者にとって『サービスは当たり前』という過保護な関係も成り立たなくなっている。

双方が従来持っていたノー・フェアな概念を見直し、パーセプションのギャップを埋めていくことによって、フェアで良好な関係が生まれるのだと思う。
by clairvoyant1000 | 2006-01-30 13:50 | 8)文化とcalture


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