偽装肉類を出荷していたとされる、苫小牧の食肉加工会社のニュース映像が気になった。
事件そのものは、さもありなんといった類のものであり、どこでも似たようなことをやっていると思ったほうが無難だろう。内部告発した社員も、悪質極まる会社の横暴に苦渋の選択をしたと解釈したいし、このシステムが正しく運用されることによってこそ、会社ぐるみの不正というものが減っていくのだと思う。
私が気になったのは、事件よりも会社入り口の屋根の上に乗っかっている牛のモックアップだ。とても粗悪な作り物で、モックアップと言うよりは「張りぼて」といったほうが相応しい。今回の事件に絡めて言えば、張子の虎ならぬ「張子の牛」といったところだろうか。会社のセンスというものは、こういうところにもカタチとして表れるのである。
さて、なぜ私が牛のデザインにこだわるかといえば、マンハッタンで愛嬌のある牛のアートをたくさんみてきたからだ。
ちょうど7年前の夏、様々なデザインをまとった実物大の約500頭の牛がニューヨーク中にあふれた。「COW PARADE」(カウ・パレード)と呼ばれるこのイベントは、世界的に有名なアーチストから小中学生までデザインに参加して牛のアートを展示したものだ。
AT&Tやシティ・グループを始めとする地元企業やレストランなど170以上のグループが支えたイベントのシステムは、スポンサーが1頭につき7,500ドルを支払い、牛にデザインを施すというもの。あからさまな商業的デザインは禁止されており、芸術的、創造的な方法でビジネスの宣伝につなげることのみ許可されているのだ。
ことの起こりは98年の夏、スイスのチューリッヒで800頭の牛を陳列して大反響を得たことに始まる。それが話題を呼び、1999年のシカゴでは340頭が街を彩って、およそ1000万人が牛のオブジェクトを堪能した。
ニューヨークでも、観光客のみならず地元市民にも大きな反響を博した牛のオブジェクトはサザビーズで競売され、収益金はスポンサーから得た資金と共にニューヨークの教育や芸術などの目的でチャリティーに回されたという。なお、この
イベントは今年の6月17日までミラノで行われていたようだ。
このような文化的なイベントを、ぜひ日本でも成功させたいものだ。え?丸の内界隈でもやっていたって?