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#86:のこるデザイン

WALKMAN.jpg「ウォークマン」の素晴らしさは、開発した黒木氏の発想力や、それを実現させたSONYの社風もさることながら、誰もが思いもよらなかった「文化」を生み、世界に広めたことではないだろうか。

私がプロダクションに入社した駆け出しの1979年、過酷な仕事がたたって身体を壊し、約1ヶ月の入院を余儀なくされた。その病室のベッドで暇を紛らわせてくれたのがウォークマンだった。

売り出されたばかりの商品は、ワウ・フラッターが気になる不完全な商品にもかかわらず、風景と音楽がシンクロした驚きは新鮮なものだった。

当時、誰も持っていなかった「ヘッドフォン型ステレオ」でお気に入りのイーグルスを聞かせ、見舞いに来てくれた先輩たちを驚かせたものである。

時は流れ、アップルのiPodによって完成の粋に達したかのようにみえる音楽再生デバイスは、場所を選ぶことなく、バッテリーや選曲の煩わしさからも解き放し、イヤフォンで音楽を聞くという文化を定着させた。

sony_hifi-s.jpgあのとき以来、私にその習慣はないけれど、イヤフォンを耳から離せない人は居るようで、きっとそんな人の耳垢はこんなことになっているはず。

エレベーターや満員電車で、横に並んだ人のイヤフォンから漏れ聞こえる音楽によって、不快な思いを経験した人は多いと思う。

そんなときどうやって止めさせるか?

エチケット専門家のアンナ・ポスト氏によると、地下鉄車内でiPodを大音量で聴いていたある乗客は、隣の女性に音を下げるよう要求しても無視された。そこで、漏れ聞こえてくる曲に合わせて歌い出した途端、電源を切ったという例を挙げている。公衆の面前で恥をかかせるとうまくいくかも知れない。

閑話休題

ウォークマンの開発プロジェクトで陣頭指揮をとったとされる黒木靖夫氏が、7月17日逝去された。

ユニークな人だったらしいが、「SONY」のC.I.プロジェクトにも携わっていたと知り、さらに魅力が深まった。きっと彼は、コミュニケーションをデザインしていたのだと思う。だからこそ、彼のデザインはカタチではなく文化として残っているのだろう。

私も、「数字の記憶法」(ロゴナンバー)を日本に広めることができれば、明日死んでもいいとさえ思っている。
by clairvoyant1000 | 2007-08-04 21:39


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