TVが軽く薄くなるのは良いことだ。主流になりつつある薄型モニターは、日本の技術が主導しているだけあって米国よりも普及している。しかし、TVのプログラムまでも軽薄になるのはいただけない。昔からくだらない番組はあったが、最近の質の低下(主に民放)には目を覆いたくなる。
だからもっぱら見るのはNHKだ。
かつて、大宅宗一氏(評論家)は、TVが急激に普及し始めた60年代に、日本人の思考パターンに悪影響を与えるTV文化に警鐘を鳴らし「一億総白痴化」という言葉を使った。鉄腕アトムで育ったTVの第一次世代としては、この意味が理解できなかった。活字の世界の人の戯言だと思っていた。
80年代、私はTV制作の現場に身を置いた。バブル経済期と重なってたくさんのコマーシャルを作り続けた。90年からはニューヨークに居を移してマーケティングを生業としている。そして2000年代。大宅氏の警鐘から40年の歳月が過ぎて思うのは、
彼の予言が的中したということ。
これからのTVをどういう方向に進ませるかは、製作者の仕事ではなく視聴者の責任である。つまり、「あなた」だ。そして次にスポンサー。センスがあると自負する企業であれば、良質のTV番組にだけお金を出すべきだ。そして、くだらないTVコマーシャルを作り続けている後輩達よ、いい加減にしろ!
こんなことを書くのは歳を取ったということなのだろうか…。